2016年2月15日月曜日

結婚するということは




福寿草






  外山滋比古さんのエッセイ集  「朝採りの思考」 講談社 2010年発行 を

図書館で借りてきてパラパラとめくってみると、数年前に読んだことがあるらしく
ところどころ記憶に残っていた。

この本の中で今回気になったのは「掛け算」という一編だった。

友人のご子息が結婚されるので、スピーチを頼まれたとのこと。

抜粋しました
 
 お二人ご結婚おめでとうございました。
 価値あるご家庭をおつくりになりますように。
 この価値というのはたんなる幸福なというのとはすこしちがいます。

 人間の価値は、知力と努力と心の三つの相乗効果であると思います。

 知力、つまり頭がはたらくこと
 せっせと働くこと
 人間らしい心を 持っていること

 頭脳、人にすぐれ たいへんな努力家であった人も
 良心を 欠いたばかりに 人間価値がゼロになった例もある
 いくら知力、努力が大きくても心がゼロでは
 三つを掛け合わせたとき、ゼロになる

 頭と努力と心、この三位が一体になって人間の価値が決まる
 バランスがとれていることが大切
 勉強さえすれば立派な人間になれるように考えるのは
 偏った教育で古い人間価値にもとづく誤解だと言える

 三位一体というのは足し算ではなくて、掛け算であるところがミソ
 ただ三つのものを加えるのだと、ゼロであろうと マイナスであろうと
 総和が少なくなるだけのことで、それほど心配はないが
 掛け算では一つゼロや、マイナスがあると全体がゼロやマイナスになってしまう
 
 家庭の価値は、こういう 人間の価値をもった両性の合力によってきまる
 夫婦和合というが、この和は加算ではなくて、掛け算であるところに注目する
 それだけダイナミックだ。
 ただ一緒に暮らしているのではなく、深く結び合ってつくるのが、
 家庭の価値だと思う。

 10を二つに分けると 19、28、37、46、55となる
 これを加えれば もちろんどれも10になる
 
 ところが掛け合わせてみると
 1*9=9  2*8=16  3*7=21  4*6=24  5*5=25
 となり、違った数になるのがおもしろい
 
 家庭の価値にもこの掛け算が当てはまるのではないか
 夫婦の一方が圧倒的につよく1*9のような家庭の価値はたいへん小さくくなる
 両者の力の差が、小さければ小さいほど値が大きくなり、
 同じになったとき最大値が出る
 五分と五分の掛け算で、最大の価値ある家庭を築かれるよう期待して
 お祝いの言葉とします。

夫婦の関係を数字で表し、お祝いの言葉にされたことに感動しました。



ふきのとう



プリムラ

ビオラ



 
結婚のお祝いの言葉で心にしみるのが、

吉野弘さんの詩  祝婚歌です

  二人が睦まじくあるためには
  愚かでいるほうがいい
  立派すぎないほうがいい
  立派すぎることは
  長持ちしないことだと気づいているほうがいい
  完璧をめざさないほうがいい
  完璧なんて不自然なことだと
  うそぶいているほうがいい
  二人のうちのどちらかが、
  ふざけているほうがいい
  ずっこけているほうがいい
  互いに非難することがあっても
  非難するできる資格が自分にあったかどうか
  あとで
  疑わしくなるほうがいい
  正しいことを言うときは
  相手を傷つけやすいものだと
  気付いているほうがいい
   ・・・
   ゆったりゆたかに
  光を浴びているほうがいい
   ・・・
   
 ・・・の部分は割愛させていただきました。

  なぜ今、この二つのエッセイと詩を取り上げたのか
  不思議に思われた方も多いと思います。
  人生の終末になって今さら考えても遅いんじゃない?
  そんな声が聞こえてきそうですね。
  
  でも、残り少ない人生だからこそ、少しでも明るく楽しく暮らしたい。
  と思うのです。

  私たちの年代の結婚は男性優位の世の中でした。
  そして家と家との結びつきが圧倒的でした。
  今もなお 奥さんを女中扱いにする人が田舎ではかなりいて、
  心がむしばまれ、体を壊す女性がいるのです。


このエッセイ  「掛け算」のように五分と五分の関係に
数十年かけても、わづかしか近づけることができなかった結果、
苦しみや悲しみはこれからも続いていくのでしょうか。

ともかく数字による二人の関係の提示は新鮮でした。
若いカップルが、五分と五分の関係を築かれ、豊かな人生を
送ってくださることを願ってやみません。













白梅・紅梅










   


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